17年11月/稲作技術の話

前半のアクシデントを挽回して、ほぼ平年作が得られました。 【 PDF版 】

9月の低温気味のお陰で、前半の障害を乗り越えました。 稲刈り中の日曜日は、田圃が孫たちの遊び場。
9月の低温気味のお陰で、前半の障害を乗り越えました。
稲刈り中の日曜日は、田圃が孫たちの遊び場。

8月末以降稲刈り中も、台風の影響も含めて大雨が何度かありましたが、お陰さまで大きな被害もなく、今年のお米作りを無事終了することが出来ました。

今年の稲刈りは、9月の気温が低めに推移したことによるのでしょうか、1週間から10日ほど遅くなりました。
また、雨の日が多く、稲刈りが出来ない日がたくさんあり、収穫終了は10月25日と近年にはない長期間の収穫作業でした。

今年を振り返ると、田植え後半から、田植え後1ヶ月余り、経験したことのない低温に遭遇し、田植えをした稲が成長せず、除草のためのマガモの放鳥や、除草機を掛ければ、稲が傷む。放鳥や除草機掛けを一時中断すれば、雑草が大繁茂する・・・etc。ハラハラ、大わらわの米作りでした。

その後稲が穂を出し9月に入りました。田圃は雑草の王者・ヒエが一杯。10人近くのパートの女性が毎日汗だくでヒエ取りに頑張ってくれました。稲はカモや除草機の傷みで例年より見栄えが良くありません。この様子で2割余りの減収を覚悟せざるを得ませんでした。

9月下旬収穫を始めた仕事の早い仲間から「今年は、大豊作」との声。我が家は、雑草に傷められ大豊作は無理だろうが、どこまで挽回したかと、一縷の望みを抱きつつ稲刈りを始めました。結果は、平年作の確保が出来たようです。9月の気温が近年に比較して低めだったお陰で、稲がじっくり稔ってくれたようです。

今年も自然に感謝の年になりました。

嬉しい誤算の豊作と稲作技術の話など・・・

草取り時に脱走したマガモたち 草取りの助っ人に呼び寄せたマガモ。性格の悪いグループ50羽ほどが草取りをサボって脱走。 稲刈り時期に見つけたら、排水路で自活し青首もりっぱに大きく成長していました。 大声で呼ぶと、姿を目視できない300m以上先の水面で遊ぶカモも集まってきました。
草取り時に脱走したマガモたち
草取りの助っ人に呼び寄せたマガモ。性格の悪いグループ50羽ほどが草取りをサボって脱走。
稲刈り時期に見つけたら、排水路で自活し青首もりっぱに大きく成長していました。
大声で呼ぶと、姿を目視できない300m以上先の水面で遊ぶカモも集まってきました。

表のページで触れましたように、当地の近辺では今年の天候は余り好くなかったはずだったのに、作柄は「大豊作」のようです。

昔から「お米の収量は、穫ってみないと判らない。」と言われますが、これは、いつも判らないのではなく「稲作期間中、好天気続きで台風などの襲来も無く秋を迎え、大豊作と思っていたら、籾摺りをすれば、意外にも低収穫だった。」逆に「悪天候続きで、大不作だと思っていたら、意外に収量があった。」という予想に反する年が時たまあるからです。
その「時たまの誤算」が今年だったようです。

今年の嬉しい誤算の原因を遡って求めると、稔る時期である8月下旬以降の天候が、特別暑くもなく、冷害年のような低温でもなく、涼しく、稲体の呼吸作用時の消耗が少なく、じっくり稔ったお陰で、粒が大きくなったのではないかと推察されます。(この文末に米粒の重さゲーム紹介)

ところで、日本で食糧が不足していた戦後20年頃までのお米作りは、収量をたくさん上げることが命題であり大事でした。
朝日新聞が主宰した「米作日本一競技会」などに注目が集まり、その優良生産者は「先生」と崇められ、その名を冠にした「○○式稲作」とか「○○農法」などの現地見学会や講演会、研究会が全国各地共に盛んに開かれていました。

この時代の稲作技術は、例えば、
①どのような土作りを行ったのか。 ②どのように耕したのか。 ③何本植えたのか。 ④何株植えたのか。 ⑤いつどのような肥料をどれだけ施したのか。
などの肥培管理の方法や品種と収穫量の結果がもっぱら追及され論じられていました。

試験場や大学の作物学研究においても、このような同じ篤農的な視点でした。

日本経済が高度経済成長を始めた今から50年前頃になって、東大の松島教授が収穫量確保の要因分析視点を稲作研究に取り入れ、稲作栽培技術もやっとロジカル・科学化しました。
それは、後から観れば、実に簡単なことだったのです。(これらを「収量構成要素」と命名)

○収穫量とは何か。単位面積当たりの玄米重量である。
○単位面積当たりの玄米重量は、何によって構成されているか。
○一粒の重さと、米粒の総数である。
○米粒の数は、1本の茎に稔る米粒と1株の茎の本数と面積当たりの田植えの株数である。

この要因分析発想により○粒の重さを上げるにはどうすればよいか。○1茎に何粒稔らせるのが適切か。○1株に何本の茎が適切か。○何株植えるのが適切か。などなどの要因を組み合わせた具体的な栽培技術の研究が進み、技術革新に貢献したのです。

さて皆さん、お米は1粒何グラムでしょうか。(1000粒のグラム数で表現します。)
○品種や栽培方法、天候により多少異なりますが、1000粒で平均23g=1粒23mgです。.

では、ご飯茶碗1杯では何粒あるでしょうか。
○ご飯1杯150gとして、お米(精米)の量で65g程度。お米は炊くと重さが2.3倍になり ます。また玄米の1000粒重(千粒重)は23gでも精米すると1割余り減り、その分 粒数は増えるので3.100から3.500粒前後です。