15年7月/有機米作りの課題や現状

雨のない6月でしたが、稲は少し遅れ気味です。PDF版

秋田美人とマガモ
秋田美人とマガモ

6月は月末の27日にまとまった雨が来た以外は、先月は、ほとんど雨のない日々でした。
その上今年は当地秋田にも早々と夏が来て、30℃を超す真夏日が出るなど、観測記録を塗り替えているという報道を聞いて「今年は格別暑い」と感じていました。

ところが、家庭菜園のナスやキュウリも、田圃の稲も、なかなか大きくならず不思議に思っていました。
こうした時に、地元農協から稲の生育状況の定点観測記録が6月下旬に配られて来ました。そこには「今年の生育は、例年よりも数日遅れている」とのこと。
その解説によれば、今年の6月は、記録的な高温日が何度も出る一方で、急転して寒い日が続くことが多く、平均的には例年よりも低温気味で、また、雨がなく、干天が続いたからだという。

我が農舎の田圃は、満々と水を蓄えている八郎湖が水源ですので、いわゆる「水不足」とは無縁の恵まれた地域ですが、6月末の久々の雨は、稲や野菜を大きく元気づけてくれました。「恵みの雨」とはよく言ったものです。

有機栽培を行っていると、5月末に田植えを終えると一段落している間もなく、除草機掛け作業や手取り除草、それに鴨を放鳥するための、脱走防止用のネット張りなど毎日大急ぎ大忙しでした。
6月6日に山形県・舟形町の鴨繁殖農場から、生後1~2週間のマガモが到着し2日ほど田圃の隅に作った餌小屋でウオーミングアップさせて、3日目に放鳥しました。

鴨の数は、多過ぎると稲が傷められ、少な過ぎると除草効果が落ちます。
各地の経験則から、1反分(10㌃)7~13羽程度が目安とされており、我が農舎の今年は1000羽放鳥しました。

上の写真は、草取り作業のパートさんについて回る鴨の軍団です。

ところで、数日後に迫った、田圃公開と白神ブナツアーの天候を気にしながら、この通信を叩いているところです。
今回参加できなかった方は、夏休みなどに気が向けばご家族でお訪ね下さい。(今夏は、8月4日~15日頃までは法事で帰省しロッヂのご利用休止です。他は事前に連絡下さればOKです。)

 

我が農舎の有機の米作りの課題や現状

我が農舎では、かれこれ30年近くできるだけ化学合成物質を使わないお米作りを(まったく使わない栽培面積の方が多いですが)続けてきました。ほとんど草との闘いです。

ところで、一般のお米作りで、化学合成物質が使われる理由は次に3つです。

  1. 作物の栄養補給対策→化学肥料の投与→収穫量の増大が目的
  2. 病害虫の発生予防や防除対策→病害虫農薬の散布→収量の減少防止や増大が目的
  3. 雑草の発生防止や殺草対策→除草剤の撒布→省力(草取り作業の軽減)

これらを有機切り替えする場合の難易度や方法を挙げると次のようになります。

1の栄養補給対策は、化学肥料の代替え用の有機由来の資材が種々ありますので、農薬など他の2つに比べ手間や費用が嵩みますが、切替は、比較的容易です。

2の病害虫対策は、病害虫の種類によっては木酢液などの有機資材がごく一部ありますが、効果的で普遍性のあるものは、種籾の冷水温湯浸法以外にはありません。
従って対策は、稲を栄養過多にして収穫量の増大を求めるという一般的な栽培方法の厳禁です。即ち、肥満防止によって病気や害虫に強い、農薬の必要のない健康な稲を育てることに尽きます。
また、1の有機資材の投入により土壌の微生物の活動を活発化させる土作りや、プール育苗で嫌気状態を保つなどの病気予防の工夫などを加えます。
熟練の有機農家は、普通の年は農薬を使わなくとも、これで何とか乗り切れますが、冷害の年などは、イモチ病の多発で大被害を受けることがあります。今年は特に心配です。

除草機掛け作業(田植え後2回実施)
除草機掛け作業(田植え後2回実施)

3の雑草対策は、有機栽培の最大の難問です。これは、前の2つ目的が、化学肥料や農薬を使って収穫量を増やすことですが、除草剤の使用目的は、収穫量ではなくて、除草労力を省くことです。除草剤を使わないと多大な労力が必要になり人手不足の中で大変です。

でも「除草剤を使わないで、他の雑草対策など何もせずに自然栽培でお米が獲れる農法」などを声高に唱える人物もおります。普遍性や現実性のない新興宗教的なマユツバ論です。

以上のように、有機の米作りは、そのほとんどを草との闘いに費やします。どの有機農家も除草剤を使わない雑草対策として次のように色々工夫してきましたが、どれか一つで完璧となる方法はなく、下欄の方法を全部や一部を組み合わせて凌いでいるのが現状です。

ア、田圃の均平 イ、複数回の代掻き ウ、深水管理 エ、米糠や大豆粕など有機資材の表層撒布などで土壌表面を嫌気状態に保つ対策 オ、除草機掛けや、チエーン、竹箒などによる機械的、物理的な雑草抑制 カ、鴨や鯉など生物利用 キ、手取り除草 などなど

我が家でも、上のほとんどの方法を行っていますが、一番大事なことは、昔から言われている「草は見ずして草を取れ」の極意です。
即ち、雑草が出来るだけ発生しないような環境作りを十分行った上で、それでも出る雑草は、芽切った直後にやっつける。

更にそれを乗り切り成長する雑草は、除草機や手取りで早めに除去するということです。

マガモと少年 (小2の孫・裕真)
マガモと少年 (小2の孫・裕真)

ところで、鴨除草は、鴨が田圃を泳ぐことで、水田の水が濁り、日光が遮られて雑草の発芽が抑えられる。 それでも発芽した雑草は、鴨が泥を掻き廻すことで浮き上がる。また、一部は鴨が食べる。・・・・・・鴨除草は、こんな原理なのです。

今年はネットの張り方の工夫で鴨の脱走を格段に減らせ、また、放鳥から1週間ほどの鴨が小さい間は、栄養価の高い餌を多目に与えることで鴨の体力を高めて衰弱死などの事故が減らせた。などなどノウハウが上がってきました。

何よりもマガモは可愛いですよ。気が向いたらお訪ね下さい。