先日、山下 一仁氏(キヤノングローバル戦略研究所)の講演では「一定の規模以上の農家にのみ所得補償を行うことで農地の集約ができ大規模化を推進する農家は効率的な営農ができる」との話が出た。
そして、「大規模化推進農家が、本来耕作放棄地になるような農地を有効に活用することで、多面的機能の不全や、地方の衰退を回避できる」という話であった。
(但し、現状の価格維持政策である減反と併存する所得補償では問題という指摘はあった)
すべてに賛同できるわけではないが、確かに、その通りと思える部分も多い。
ただ、一つ気になったのは、これが現実のものとなったとして耕作放棄地は増えず農地は維持できかもしれないが、農村のコミュニティはどうなるのだろうか、ということ。
今までの10軒の農家分を1農家がやることとなれば、残りの9軒は地元にいる意味を失う。
兼業農家は農業以外の仕事も地元でやっているだろうが、農地と言う縛りがなくなった以上、すぐにではなくても、もっと稼ぎの多い都会に出る率が増えるのではないだろうか?
もちろん、現状の小規模農家が細々と生業と言えないような農業を続けることも近い将来行き詰るだろうし、地域のコミュニティが維持できるとは思わない。
ただ、大規模化が地方の生き残りの救世主と言うのには少し違和感が残った。
(地方の農地・耕作放棄地にとっては救世主かもしれないが)
今後、日本全体の人口減少が進むことを考えれば、
そもそも現在のコミュニティを維持すること自体が無理であり、農家の規模は拡大(=農家数は減少)し、人口も減少する中で、新たにどんな理想的なコミュニティを作るべきかと言うことを考えなくてはいけないのかもしれない。