「日本は高付加価値農業で生き残れる」のウソ

最近のコメ余りや、TPPなどの議論でよく言われるのが、
「差別化、高付加価値農業で生き残ろう」という戦略
これが、間違いだとは思わないけど、高付加価値農業でどれだけの農家が生き残れるかという疑問。
そんなこと思ってたら、こちらに面白いアンケート結果があった。
食品企業の農業参入に関する意識調査(日本政策金融公庫農林水産事業)http://www.afc.jfc.go.jp/topics/pdf/topics_110216_1.pdf
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このアンケートは、農業への食品企業の参入の賛否を問うもので、それに関しては、消費者の6割が支持。
ただ、消費者が食品企業の参入を支持する理由のうち、
「付加価値の高い商品を提供してもらえる」という理由は僅か6.3%
上位回答は、品質や供給が安定する、価格が安くなる。

面白いのは、企業側が農業参入する際の理由の第一位は「高付加価値・差別化」で41.7%と、見事に消費者とギャップが生じている。
これは農業全体に期待してではなく企業参入を支持する理由ではあるが、農産物における高付加価値に対する消費者の期待はそれほど高くないと想像できる。
まぁ、このことは、ほとんどの農産物が嗜好品ではなく生活必需品であることを考えると、当然といえば当然
まして、高付加価値は他より相対的に価値が高い商品のことを指すので、高付加価値商品が増えた途端、それは高付加価値ではなくなってしまうわけだし
ちなみに、高付加価値の一つ、有機農産物(JAS認証品)の農産物全体に対する割合は0.2% (認証のない農薬不使用農産物を含めても、せいぜい1%前後)
これは、農家が自堕落で手間がかかるから作らないというよりは、消費者ニーズがなく、作っても売れないから作ってこなかったという面が大きい

やはり、高付加価値農産物はそれほどニーズが大きくないことがわかる。
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「農家は厳しい」、「農家がつぶれてしまう」という話になると、「努力しない農家はつぶれてしまえ」的な話が出てくる。
それには同意するが、別に努力しない農家も保護しろいう話ではない
努力して高付加価値を目指してもニーズがなくて売れないんじゃどうすればいいんでしょう?
どの方向で努力すればいいんでしょうか?
という話。

ちなみに、規模拡大でコストを下げて安さで勝負という方向は、ある程度の集約や規模拡大は必要だが、そもそも平野部が少なく中山間地なども多い日本で規模拡大でのコスト低減には限界があり、それによって、輸入農産物とガチで戦えるとは思いにくい。
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ここで言いたいのは、
「高付加価値戦略で日本の農業が生き残れる」という単純な理屈は通用しない」ということ。
(逆の「規模拡大によるコスト軽減で生き残れる」という話も同じ)
そんな言葉に踊らされて高付加価値農産物をたくさん作ったら、今度は、「農家は消費者ニーズも把握しないでただ作ればいいと思って!!」なんて言われてしまうよ(笑)。
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じゃぁ、どうしたら生き残れるのよ?ってことだけあど、それは単に高付加価値でもなく、単に価格競争でもない、バランスの取れた戦略が求められるんでしょう。
そのバランスの取れるポイントは、農産物の種類、産地、農家によってさまざま。
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ということで、最後にこれ。
TPP議論が不毛なのは農業が想像を絶するほど多様だから
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5431
こちらを見ると、農業とひとくくりにできないってことが理解できます。
要は、最近の若いもんは・・・・ってのと同じですね(笑)。

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