我が家は個人のお客さんにお米を直接販売しています。
そんなことしてると「個人向けに売るのは儲かるんでしょうねー!!」なんて言う人がいます。
「だったら自分でやればいいじゃん」と思いますけど、大事なことひとつだけ言います。
あなたが思ってるほど、儲からないと思いますよ
その理由を書こうと思いますが、その前に、なんで僕が個人向け宅配をやってるかを先に書きます。
それは「僕にとっては個人向けのお米の販売が楽しいから」です。
・・・別に「きれいごと」で言ってるわけじゃありません。
そして、当然、遊びでもボランティアでもないので、しっかりとメシを食えるだけの利益も頂いています。ただ、これから書きますけど、すごく儲かるわけではなく手間もかかります。
手間もかかって簡単に儲かるわけでもないことをやってる理由は「楽しいから」。
「楽しいから頑張って、頑張ったからちょっとだけ儲かる。」そんな感じです。
さて、本題。
個人向け販売で最初にコストとして思いつくのは精米や袋詰めの機械代や資材費や手間賃だと思います。
でも、実際、一番かかるのは広告や宣伝など、お客さんを見つける費用(と手間)です。
(さらにお客さんに買い続けてもらうための手間や費用もかかります)
ここから個人向け販売に関しての簡単な計算です。
-1俵60kg12,000円のお米を、2倍の24,000円で個人向けに売ります。
※ネット通販で5kgや10kg単位で売ることを想定。白米5kg約2,000円の計算です。
- 販売量は500俵。増える粗利は12,000円/俵×500俵=「600万円」!!
実際は精米や資材などのコストが100万円~。さらに受注や出荷に1人必要になるので人件費で100~200万かかると思います。もちろん自分の手間も今よりずっとかかります。
- 500俵売るには、継続的に買ってくれるお客さんが400~500人。
1人のお米購入量は30kg弱/年。単身世帯や夫婦だけと言う世帯も多いので1顧客の平均60kg/年。
※大家族を狙うのも手ですが、その場合スーパーより割高な価格設定は難しいでしょう。
- 1度買ったお客さんが全員が継続購入はしないので、500人の年間定期購入顧客を見つけるには、その5倍の2,500人ぐらいが必要。
初回だけお得なキャンペーンなどでお客さんを捕まえた場合はリピート率はガクッと減るのでもっとお客さんを見つけないといけないかもしれません。
- その1度でも買うお客さん2,500人を見つける広告やキャンペーンのコストは5千円~1万円/人
お米は産直販売農家が山ほどいて、消費者の米への関心も薄れているので、1万円以上かかるかもしれません。
つまり、500俵のお米を買ってくれるお客さんを見つける費用だけで1千万~2千5百万円!!
一度500人の定期購入顧客を見つけたら安泰かと言えば、大きな問題がなくても年間1~2割はお客さんは減るので、定期購入50人×5倍=250人のお客さんを毎年探す必要があります。(売上を増やすためではなく維持するためだけで)
販売単価は高いかもしれませんが、そんな簡単に儲かると言えるでしょうか?
長々と書きましたが「個人向けは(簡単に)儲かるでしょー」と言われることに対する愚痴です(笑)。
ところで、「黒瀬農舎はそんだけ金をかけてるのか?」と言われるとそんなに金をかけてないです。
正直なところ最近広告費と言うものにはほとんど金払ってません。でも、広告宣伝にお金をかけない分 (かけられない分)、手や身体を動かしています。
また、上に書いたほどのコストはかけられませんが、広告宣伝費以外にコストをかけます。お客さん(お客さんになりそうな方)とお話したり、色々とホームページ更新したり、チラシ作ったりしてます。
お米と一緒に買ってもらえそうな加工品を作ったりします。
もちろんお米自体の味も美味しくできるように栽培はもちろん、その先の乾燥調整や精米、袋詰めなどにも手間やコストをかけています。そうすることで広告費にまわすお金を削っても、新しいお客さんに来てもらい、さらにお客さんと積極的にコミュニケーションをすることでお客さんが離れてしまうのを防いだり、他のお客さんを紹介してくれたりというプラスの効果を生んだりしています。
ただ、これは手間も時間もかかりますし、一気に広まりはしないのでお客さんが増えていくのも少しずつです。
でも、その手間をかけている部分が自分にとっては楽しい仕事なので、手間に対してそれほど儲からなくても楽しくやれているのです。
「個人のお客さんとのコミュニケーションは大変だし苦痛だなー」と言う人にとっては、個人向けの販売は難しいと思いますし、結果的にそれほど儲かる世界でもないと思います。
ただ、逆に言うと「どうしても個人のお客さんに直接農産物を売りたいんだ!!」と言う農家(新規就農希望者)がいるとすれば、手間はかなりかける必要はありますが、やりようはあると思います。
もしそんな人がいたら、自分が失敗した事例をお話できる程度ですが、少しぐらいはアドバイスできるかもしれません。
でも、「なんか個人向けって儲かるんでしょー!」って人は間違っても来ないで下さい(笑)。