地元で「斑点米とネオニコチノイド系農薬を考える連続集会」があったので参加してきました。
ネオニコチノイド系農薬と言えば、近年のミツバチがいなくなった原因とも言われている農薬です。
(明確な因果関係があるかどうかはわかりませんが)
自分自身は勉強不足で稲作でネオニコチノイド農薬が使われてることを最近まで知りませんでしたが、稲作で使われる農薬の商品名で言うと、ダントツ、スタークル、アドマイヤー、ベストガードなどがネオニコチノイド系農薬だそうです。
今回は、前半がネオニコチノイド農薬問題の現状などについて、後半は斑点米や穀物検査制度の問題とネオニコチノイド農薬の関係などのお話でした。
前半の総論の話は置いておくとして、後半の斑点米の話を説明したいと思います。
◆斑点米とネオニコチノイド
カメムシが穂が出たばかりのお米が柔らかい時期にお米を吸い、お米に茶色い斑点状の傷(シミ)ができたお米を斑点米と呼びます。
これを防ぐために夏場にカメムシを退治するための農薬をラジコンヘリなどを使用して散布していますが、この農薬が一般的にネオニコチノイド系農薬を使用しています。
◆斑点米と米の検査制度
お米には米穀検査と言う制度があります。これはお米の品種や品質を検査する制度です。
ここではお米は1等、2等、3等…と等級格付けもされるわけですが、格付けの基準は基本的に見た目が主体であり、斑点米は1000粒中2粒以上あると2等となってしまいます。(もちろん他の理由で等級が落ちる条件もあります)
ちなみに、お米を卸業者などに売る場合、現在1等と2等の格差は600円~1,000円/俵、10aあたり6千~1万円(反収10俵換算)。
一方で、農薬のコストは10a 2,400円程度とのことで、2等に落ちるのを防ぐために、農薬を散布するのが経済的には理に叶っているとも言えます。
◆斑点米を除去する方法
消費者からすると、1,000粒に数粒であっても斑点米がないに越したことはないですよね?
その気持ちは十分に理解できますし、消費者に斑点米を我慢しろ、と言う理論ではありません。
実は、斑点米は色彩選別機という機械で除去することが可能です。
これは精米をする際などに使用する機械ですが、斑点米に限らず異物除去なども兼ねて、多くの精米工場ではすでに導入されている機械です。
つまり、仮に玄米に斑点米が入っていても、精米して消費者の手元に届く間には除去が可能なわけです。
もちろん斑点米を除去することでのお米のロスが発生しますが、そのロスは1俵あたり62円と試算されています。(1等と2等の差の場合)
つまり62円分のロスしかないのですが、実際に取引される場合は600円以上の価格差で取引されているわけです。
◆62円vs600円の価格差
「精米している業者がぼったくってるなー」と言う声も聞こえてきそうですが、業者側の言い分も当然あります。
それは「他の理由だと600円でも損をするかも…」と言うことです。
2等になる理由は、最近では斑点米などの着色米が多いようですが、他にも生育不良などが原因の場合もあります。
斑点米では600円差の2等米を色彩選別機で通して1等と同じ品質すると儲かるかもしれませんが、それ以外の理由だと1等との品質格差、ロス率なども高くなり、逆に600円の差でも業者は損をしてしまうこともあるのです。
よって、2等との価格差を単純に縮めろ、と言う理論が100%正しいとも言えなくなります。
◆どうしたらいいのか?
斑点米とネオニコチノイドという意味では、斑点米による等級の価格差が、斑点米を減らすための農薬コストより下回れば、斑点米予防だけのネオニコチノイド農薬の使用は回避できます。
さて、ここで斑点米を問題とする方々の提案を大雑把にまとめ、それに対して個人的なコメントをつけてみました。
-現状の検査制度は維持したまま1等と2等の600円の格差を減らす
等級が落ちている理由が斑点米だけであれば業者側も認めると思います。
ただ、そもそも産地・品種・等級である程度相場が決まっている現状で、「斑点米の2等だから100円差」「未熟米の2等だから1,000円差」と言うような個別の理由付けで等級内で値段差を付けるのは難しいでしょう。
しかし、元々の600円は従来の国が全量買取をしていた時代の格差から来ているようですので、現状斑点米が理由の大半を占めるのであれば、600円と言う格差をもう少し減らす方向にするのはできるかもしれません。
(今回の集会後の行動としては県やJAに対して、そのような働きかけをしたいとのことでした)
-検査の見直しをする
現在は機械で除去できる斑点米や着色粒を、検査でここまで厳密な基準を設ける必要があるかと言う問題もあり、何かしらの見直しを求めて行く、と言う意見もあります。
(もちろんある程度多くなれば、ロス率も高くなるので、どこかに線引きは必要だと思います)
◆余談(米の検査制度について)
この検査は強制ではありませんが、検査を受けないと「あきたこまち」や「こしひかり」と言った品種を表示して売ることはできないので、販売をするためには検査を受けることが実質的に必要となってきます。
ただ、この検査自体が、上に書いた斑点米の基準の問題も含め、基本的に見た目重視の検査であり、消費者が求める美味しさなどを反映したものではありません。
元々は、国が全量買い上げていた時代に、買い上げのための基準としての検査でしたし、当時は味などが重視される時代ではなかったので仕方ないのですが、現在の米の流通や消費者ニーズを反映していないという問題もあります。
◆個人的まとめ:ネオニコチノイド農薬の問題点
ネオニコチノイド農薬の影響については、人への影響もあるとも言われていますが、素人の僕にはその真偽はよくわかりません。
ただ、どんな農薬についても人や環境への影響がゼロだとは思えないので、ネオニコチノイド系に限らず、農薬はできるだけ使わない方がいいだろう、と思っています。
しかし一方で、農産物を商品として流通させる上で、病害虫の被害を受けた農産物、また農薬を使わずに手間をかけた農産物が、そのことをきちんと評価されることは難しいと思っていますので、必要な農薬の使用はやむを得ないとも感じています。
ただ、稲作における(特にカメムシ防除における)ネオニコチノイド農薬の使用は、収穫後に機械による除去するという代替方法があり、消費者に不利益を与えることなく、農薬を削減できる可能性があるのでは、と思っています。
※最後に多少農薬使用の擁護っぽく書いていますが、黒瀬農舎ではネオニコチノイド系農薬は一切使用していません。